『孫子の兵法』と聞いて何を思いますか?「なんか難しそう」と思う方も多いのでは。
ということで今回は、この『孫子の兵法』のポイントをできるだけ簡単にまとめてみることにします。どんな方でも、これだけ読めば『孫子の兵法』のポイントがわかります!
『孫子の兵法』実は簡単!?
「孫子の兵法なんて専門的で小難しそうだし、所詮、古代に書かれた昔の本でしょ」と言う方がいます。
確かに兵法書特有の専門的な記述もあり、大昔に書かれた本なのですが、記述の中には現代の世の中でも十分通じる内容がたくさん書いてあります。
読むと「なるほど。意外に簡単だな」と感じる本、それが『孫子の兵法』なのです。
『孫子の兵法』が書かれたのは、2500年も前!なのに、今日の日常生活で使えるような内容がたくさん書いてあって、読むときっと驚くと思いますよ。
文字数も実は少ない
このサイトにも『孫子の兵法』の全文を日本語訳で掲載していますが、日本語に直しても文字数は 20,000文字程度ですので、20分ほどあればすべて読めてしまいます。
書物としてみると『孫子の兵法』は文字量的にはかなり少ない部類ですので、是非一度目を通しておきましょう。
『孫子』とは?
孫子とは、紀元前500年頃に古代中国の春秋戦国時代に活躍した武将・孫武(そんぶ)のことです。
若い頃から兵法書や古典を学び、過去の戦いでの用兵術を研究していた孫武ですが、新興国の呉で将軍になると、大国・楚を1/10の兵力で破るなど歴史上に名を残しました。
その孫武が書き残した兵書が『孫子の兵法』です。その後『孫子の兵法』は、子孫と言われる孫臏や三国志で有名な曹操が手を入れ、現代に伝わっています。
『孫子の兵法』はただの兵法書ではない
冒頭でも少し触れましたが『孫子の兵法』は単なる兵法書ではありません。
リーダー(王)や現場指揮者(将軍)がより良い結果を出すためには、何に気をつけ、何をすれば良いのか、をまとめたのが『孫子の兵法』なのです。
『孫子の兵法』の特徴
兵法書といえば “必勝法” が書いてあるのかと思いがちですが、『孫子の兵法』の中で一貫しているのは、必勝法ではなく「戦いに負けず生き残っていく方法」です。
勝つことに意義を見出すのではなく、負けずに次に繋げていくにはどうすれば良いか、弱者でも強者相手に戦い続けるにはどうすべきかにフォーカスしているのが、『孫子の兵法』の特徴といえます。
『孫子の兵法』はどんな人に役立つ?
『孫子の兵法』は、リーダーや現場指揮者に向けた内容ですので、経営者はもちろん、組織管理に悩むがちな中間管理職の方などに『孫子の兵法』はピッタリです。さらに、競合相手(敵)との戦い方を書いた内容は、営業やマーケティングセクションで働かれている方にも役立つでしょう。
また、処世術としても役立つ内容がたくさん書かれているので、これから社会人として巣立っていく学生にもお勧めします。
『孫子の兵法』の構成
『孫子の兵法』は13の章から構成されていますが、さらに大きく分けると、大局的に戦いを分析している「戦略的なパート(1〜7章)」と、実戦的に取るべき選択を記載している「戦術的なパート(8章〜13章)」の二つに分類できます。そして、特に読んでおきたいのは、前半の「戦略的なパート」です。
ここからは『孫子の兵法』の前半部分を中心に書かれている重要なポイントを要約してみようと思います。
『孫子の兵法』の要点まとめ
『孫子の兵法』について、現代でも役立ちそうな内容を中心に要点をまとめてみることにしましょう。
戦いについて
『孫子の兵法』では、戦いはできるだけ避け、戦わずに相手を従えることを優先し、戦わざるを得ない時でも味方の国力を削らないよう短期に終えるべきと書かれています。
- 戦いは騙し合いで、本当はできることでもできないように見せかけるし、必要であっても必要でないふりをする。
- 最低限の目的だけを達成する短期決戦が有効なことがあっても、多くの目的を叶えようとする長期戦が有効であったことはない。戦いに勝つことは確かに必要だが、長期戦になることは避けなければならない。
- 戦利品は自国に組み入れて戦力を増強する。捕虜にした兵は待遇を良くして味方に組み入れる。敵に勝ちながら、味方の体力を増強させなければならない。
- 相手を傷つけずに降伏させることが一番重要で、戦いに勝って相手を打ち破るのは次善の策である。百回戦って百回勝つことよりも、戦わずして勝つのが最善である。
- 戦うべき時と戦ってはいけない時を知る者は勝つ。十分に準備し、準備できていない相手を待ち構える者は勝つ。
- 戦いは迅速が第一である。相手の準備が整わないうちに、思いがけない方法を使い、備えていない場所を攻撃するべきである。
- 戦いで大切な点は、敵の意図を正しく把握することである。
用兵について
まず相手と自分の実情を分析した上で、勝てる条件を整えることが重要で、勝てる条件が揃わない場合は、戦いに臨むべきではないというのが『孫子の兵法』の考えです。
- 用兵の原則は、味方の兵力が敵の十倍であれば包囲し、五倍なら攻撃し、倍なら敵を分断し、対等なら士気を上げて戦い、敵に劣れば退却し、敵が圧倒的であれば戦いを避けて隠れる。兵力が大きく劣っているのに強気で挑んでも、敵の捕虜になるだけである。
- 相手の実情を知り、自分の実情を知っていれば、百回戦っても負けることはない。
- 勝つ軍は戦う前にまず勝つ条件を整えてから戦いを始めるが、負ける軍は戦いを始めてから何とか勝とうとする。
- 優れた兵法家は、軍の勢いを求めるが、個々人の力を求めることはない。自分が主導権を取り、相手のペースに巻き込まれない。自分の意図を隠して相手に態勢をとらせるため、自分たちは兵力を集中できるが、相手はすべての可能性に備えようとして兵力を分散し、手薄な部分ができる。
- 用兵は相手の裏をかくことが基本で、損得勘定を計算しながら動く。
- 知恵のある者は、ある一つの事を考えるときにもメリット・デメリットの両面から洞察する。利益になる事柄にデメリットの側面を加えて考えることで、狙い通りに達成できるし、マイナスとなる事柄にメリットを加えることで不安を消すことができる。
- 相手が大切にしているものを奪取すれば、相手を自分の思い通りにできる。
トップと現場指揮官
トップ(王)と現場指揮官(将軍)の求められる資質や行動についても『孫子の兵法』に記載されています。現代のビジネスシーンにピッタリの指摘です。
- 現場指揮官はトップの補佐役である。現場指揮官がトップと親しくしていれば、その国は必ず強いが、現場指揮官とトップの間に溝があるなら、その国は弱い。
- 現場指揮官が有能で、トップが余計な干渉をしなければ勝つ。上下の間で意思統一できている者は勝つ。
- トップは現場の事情や業務内容をよく知らないのに干渉してはならない。現場が混乱して、トップへ疑いを生む。
- 現場指揮官が弱腰で厳しさがなく、敵情を分析できず、命令も明確でなければ、組織は乱れて敗れる。
- 現場指揮官は、物静かで思慮深く、公明正大で自分をよく律しなければならない。
『孫子の兵法』を活用しよう!
『孫子の兵法』の解説、いかがでしたか?
日本でいうなら縄文時代に、このように現代でも通じる書物を書いた人がいたのは驚きという他ありませんよね。
『孫子の兵法』には、人生訓・処世術として使える言葉もたくさん眠っていますので、自分に響く言葉をぜひ探してみてください。
『孫子の兵法』に興味を持った方は、解説書も豊富で多数出版されていますので解説付きで読んでみるのもお薦めです。