美人の計(びじんのけい)〜 兵法三十六計・第三十一計
「兵法三十六計」とは?
兵法三十六計とは、中国の三国時代以降に生まれた兵法書で、宋代初めに活躍した名将 檀道済(たん どうせい)がまとめたものです。
「兵法三十六計」は兵法における戦術を六系統・三十六種類に分類した内容で、書かれている故事や教訓は、単なる兵法ではなく処世術としても活用され、広く知られています。
また「兵法三十六計」は、ことわざの「三十六計逃げるに如かず」(迷ったときには機をみて撤退し、後日再挙を期すのが最上の策である)の語源ともなっています。
今回は、この「兵法三十六計」の中から「第三十一計」にあたる「美人の計(びじんのけい)」をご紹介しましょう。
「美人の計(びじんのけい)」とは?
「美人の計(びじんのけい)」とは、春秋時代の故事から取った言葉で
「美女や珍しい物を献上することで、相手に安逸をむさぼらせて闘志を削ぐ」
計略のことです。
紀元前500年頃、中国の越に西施という絶世の美女がいました。先だって呉に会稽の戦いで降伏し、日々その復讐に燃えていた越王 勾践でしたが、越の謀臣であった范蠡が西施を見出し、密命を与えた上で呉王 夫差の元に献上しました。
西施に夢中になった呉王 夫差は、西施のために贅沢な離宮を造営して国庫を浪費し、次第に国政を顧みなくなっていきます。
こうして20余年の長い期間で次第に弱体化していった呉に対して、一方の越の勾践は「臥薪嘗胆」国力を蓄え、ついに呉を討伐して夫差を自刃に追い込んだのです。
「美人の計」は、今風に言うと「ハニートラップ」といったところでしょうか。
優れた人でも女性に溺れて人生の歯車が狂ってしまうケースは少なくありません。常に自分を律することを忘れずに、人生を送っていきたいものですね。